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失われし場所と時間

先日、約二年振りに東京の喫茶店を巡る旅をしてきました。
時間の流れを忘れさせてくれる喫茶店は、
二年ぶりでもそのままにあるのが当然だと思っていました。
しかし、それはただの浅はかな夢でした。

お江戸ならではの神保町「李白」は、お店の趣向を変え、ジャズ喫茶「きっさこ」となり、
中野の「クラシック」は店主様の人生とともにお店を閉じられていました。

クラシック閉店は事前に聞いていましたが、
どうしても信じられなくて閉店してしまった「クラシック」の前まで行ってみました。

一月末で閉店した店には、主人がいないのをいいことにスプレーで意味のない落書きがされてある。
歩きながら食べたマクドナルドのゴミや空き缶もたくさん投げられてゴミ山までできている

哀しさや残念さではなく、なんだかわからない情けなさが込み上げてきて言葉がでない。

大好きだった窓についていた木枠も姿をけしている。
扉の横のガラスから中をのぞくと、二年前そのままの手書きのtoiletの文字やリクエスト曲を書き込む黒板がみえるのに。

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扉には、閉店の言葉と現在、クラシックを管理している法律事務所の連絡先が書いてある。
そのしたには、持って帰れるようになった紙がファイルにいれてあるから、
手にとって、そこに書かれている詩を読んだ。

何も変わらないまま手の届きそうな店内がみえるのに、
クラシックは戻ってこないよと冷酷に嘲笑うようなゴミの山と落書きの前で、
詩を読んで初めて、クラシックがなくなってしまったことの実感がわいて涙が溢れてきた。

溢れてきた涙で、クラシックを失ってしまった喪失感を埋めることができるはずもなく、
からっぽになった心のままで、店をあとにした。
立ち去るときには、クラシックがもう化石のように見えて、心の中で合掌した。

本来ならば、乙女屋のHPにある東京喫茶案内と題したページを新しい情報に切り替えるべきなのですが、
私がすごしたあの店でのひとときをせめて乙女屋サイトにだけでも遺しておきたい。
失われた場所と時間はもう二度と戻らず、
今あるお店でさえ、いつまでもあるという保障はない。
ならば、せめて乙女屋の喫茶案内のページだけでも時間を止めたい。
そう思って、乙女屋のサイトの案内ページの更新はやめました。
明日は、クラシックでいただいた、詩を紹介したいと思います。
すぐにでもかけつけたくても、どうしてもいけない、
全国のクラシックFANのためになると
思っています。
失われし場所と時間_e0037611_175367.jpg

by otomeya | 2005-08-01 17:05 | 失われし場所


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