雨の日。静かな午後。久々に、空想。
夢に敗れたことはありますか?
諦める、のではなく、敗れる。
その日、私は京都の町をお友達と歩いていました。
お友達は、その日、夢に敗れたという心境だったと思います。
残念でならない夜でした。
だけど、彼女の中には敗れた一方で、諦められないものもあったのでしょう。
ふと、
「近くにね、小さいけれど、とても素敵なお店があるの。
なんのお店かわからないのだけれど、とにかく空間が素敵なの」
と、教えてくれました。
励ましの言葉なんて、もうとっくに尽きた。
少しでも、何かが見えるなら・・・と、
一緒にその小さなお店を尋ねました。
彼女が連れて行ってくれたのは、
100年以上前に建てられた古民家を改装した建物でした。
硝子越しに中を覗くと、
日本家屋の中に、年代物の舶来家具が薄暗い空間に並んでいます。
お店なの?ギャラリーなの?入っていいの?
これって営業しているの?
数々の疑問を二人で話しながら、
あんまり時間ないけど、ちょっと聞いてみようよ!
と扉を押した。
そう、私はそういうどきどきが、とても好き。
何かわからないけれど、惹かれずにはいられないもの。
めったに出会えないけれど、
そういう瞬間、未知との出会い、
運命を感じるようなこと、どれも大切な宝物。
結局、数回しか行けなかったけれど、
宝物の場所でした。
この6月で、建物老朽化により立て壊しになるそうです。
あの場所で過ごした、わずかな記憶は、雨の湿気とともにありました。
古民家のもつ独特な木造が湿度と一緒に皮膚に感じるものがある。
蚊取り線香の香りと、ミスマッチさが心地よかった豪奢な椅子たち。
大好きだったな、でも、いつまでもいつまでも、
永遠に変わらないでいることなんてできない。
あの場所も、記憶の中の場所へと、移築する時期になった、
と思うしか、ないのです。
記憶の場所を久々に歩く、
店構え、お店で過ごした時間や空気、時には音楽も、
鮮やかに思い出すことができるのに。
もう訪れることができない、すでにこの世界にない場所たち。
目を閉じて、このまま眠りにつきたくなります。
雨音を子守唄に。。。
さよなら、あの場所。
今日は、音楽会が開催されるようです。
行けないけれど、かつて過ごした時間を、
私は一人、遠くから楽しむことにしました。
あの空間を大事にされていた皆様に感謝の気持ちを。。。
ありがとうございました。