ある一日。

雨が降ったり、やんだりの一日のこと。

特にイベントもない乙女屋には、見るだけのお客さまさえまばら。
それはいつものことだから、予測済み。

10年も経った今は、そんなときこそ、対応が遅れている業務を少しずつこなす。

自分のふがいなさばかり見えて、このまますべてを片付けて、なんにもなくさっぱりしたほうが、よほど世の中のためになるのだろうか。なんて考えたりする。


溜息をつきながら、そろそろ閉店が近いなあと思ったときに、扉が開いた。

訪れてくれたのは、数ヶ月ぶりのお客様。
まだ20代前半の彼女は、すこしはにかみながら微笑んで、

「私には、まだ早いと思うのだけれど、どうしても千恵さんのワンピースを見てみたくて」とつぶやいた。


千恵さんのワンピースは、”女のワンピース”だと思っている私は、

「そうねぇ、あなたには少し早いかもね。

でも、気にかけてくれたのは嬉しいわ。
せっかくこんな日にわざわざ来てくれたんだから、よかったら、着てみたら?」

と、返答する。


「え、いいんですか?」と彼女の表情は、パッと明るくなって、

私は当然嬉しくて。「もちろんよ!!!!!!!」

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(乙女屋のフィッティングルーム)


フィッティングから出てきた彼女は、とても似合っていた。

華奢で小柄な彼女には大きいだろうと推測していたけれど、さほど、気にならなかった。
むしろ、ちょっとローウエスト気味に、ゆったりきると、
ジャストサイズで着るより、少し幼い印象になり、それが彼女の雰囲気にとても似合っていた。


鏡の前で、彼女は自分でも、同じように感じたみたい。
何かがほぐれたように、そのワンピースに惹かれた理由を、聞かせてくれた。
彼女の夢のこと、仕事のこと、今、感じていること、も、少しだけ、話してくれた。

丁寧に言葉を選びながら聞かせてくれた彼女の話には、悲しい経験も含まれていた。
けれど、自分の至らなさも、受け止めながら、前を向いて、進んでいこうとする希望の芽生えが見えた。

そういう強さを、
いや、強くないかもしれないけれど、強くなろうとしている女の子が、
着てみたい、と思うワンピースが、乙女屋にあることが、嬉しかった。


次に会うときまで、お互い、少しでもあの日の自分より、いい女になっていようね、


と、心で勝手に約束をする。


女の道は、いいですねぇ。














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by otomeya | 2017-09-25 12:17 | 日々の戯れ


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