寒空の下、雑踏の街を歩いていたとする。
偶然通りかかった店先の、
温かな灯りの窓の向こうに、こんな世界が広がっていたらどうだろう?
どこか、孤独感がある少年の油絵は吉田キミコさんの作品です。
この絵を見たとき、寒い季節、通りから窓越しにこの絵を見たい、と思いました。
そして、この絵が乙女屋に来ました。
思っていた場所に飾り、通りに出て、窓越しに見つめました。
思い描いた通りの光景があって、悲しいくらいに愛しくなりました。
私は、絵が大好きで大好きで、あちこち見て回るのが好きなのではない。
ただ、なにかこう、掻き毟られるように惹かれるこういう瞬間に出会いたい、ただそれだけ。
そういう瞬間であるならば、対象が絵であろうと、古物であろうと、文章でも音楽でもいい。
自分の奥底と見えない何かがアクセスするような言葉にしがたい恍惚、そのために生きている。
私以外の人で、この絵に心が惹かれる人はどんな人だろう。
その人に会うために、私は乙女屋で待っています。