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繋がる

何度繰り返した会話だろう?

大体、絶版になった小さな本についてから、話は始まる。
硬くて厚みのある表紙に守られて、非日常が深く広がる本だった。

「本で見ていただけの人形を、昔人形青山で見た」

「そう!そう!!!!」


話していて、共感する、というより、おそらくそれぞれがその時の自分の衝撃を思い返している。

話が特に膨らむこともなく、そのあとは、大体、人形に目線を戻す。


関西で創作人形に興味を持ち、年代が近い人とは大体、この話が同じ人とでも何度でも繰り返される。


ずっとそれが当たり前だった。
関西で、創作人形といえば、昔人形青山だった。


その頃の実感は、いまだに残っているけれど、いつしか月日が過ぎていた。
最近では、創作人形を最初に見たのはインターネットの画像の人が多いだろうか。
様々な創作人形の作家さんの情報を、手軽に誰でも、平等に調べることができる。
昔人形青山のことを、知らない創作人形ファンと会う機会もずいぶん増えた。
時が過ぎたのだな、と感じる。


2000年までの私は、今のような状況が訪れるとは思わなかった。


インターネットがない当時、一般的ではない展示の情報を手に入れることはとても大変だった。
手がかりはほぼなく、勘を頼りに、小さな店を自分の足で巡るしかなかった。
それらのお店は、店主と顧客のコミュニティがあるように感じられ、一見の私にはほぼ声をかけることはなかった。
恐る恐ると、フライヤーを集めてみたり、自分が交われない輪で広がる会話を密かに意識したりした。
そうやって、わずかな情報を貪欲に求めるしかなかった。

そうやって知ったマニアックな音楽やお店を知っているだけで、自分まで特別な何かになったような錯覚をできる時代だった。


私は昔人形青山さんのコミュニティには入っていない。
だから、青山さんについて知らないことばかり。
後になって、本当に私、知らなかったんだな、と思う。
青山さんはお話が好きだったと聞いたり、ワインがお好きで、作家やお客さんが交流するためのパーティも盛んだったそうだ。
参加するどころか、そういう店であることも、知らなかった。

青山さんが意地悪訳だったわけじゃない。
当時の私は青山さんに追いついていなかった。
ただそれだけ。そして、それが正しい、と思う。

何度も人形を見に伺った。
珈琲もいただいた。
惹かれる人形はあったけれど、手に入れるになにかと縁遠い感じがした。
質問が浮かぶようなところまで、自分が至っていなかった。

ただ、とにかく、創作人形に少しでも触れられる場所は、青山さんだけだった。
だから、時折訪れて、人形がいる空間に身を置き、珈琲を飲んで、自分の空想を楽しんで、お礼をいってコーヒー代を払って帰る。
それだけのことで、青山さんは、その頃の私のことを絶対に認識していないと思う。


お店を始めて、すこしたったころ、人形に関わることについて、悩むことができるようになった。
誰に聞こう、と、思って、青山さんが浮かんだ。
自分にとっての原点の青山さんへ伺い、あの空気を吸って、おこがましいけれど、青山さんにアドバイスを求めたいと思った。
言葉少なく、的確な答えをいただいた。
それがなければ、今の私はなかったと思う。


自分が人形を扱うようになっても、他の場所で販売経験を積んでも、私の原点は今でもあの頃の感覚が抜けきらない。
これはだめなことだろうか?
現在から取り残されているのだろうか?


さて、これからどうしよう、と自分が思う。


そう思っていた時に、ツイッターであるインタビュー (https://shimirubon.jp/columns/1692846 )に出会った。

その中の次の部分。

 以前、水道橋の飲み屋で、天龍や鶴田や馬場の試合をリアルタイムで見てきたおじいさんたちがいて、一緒にプロレス談議で盛り上がったことがあったんです。その時、相手に気を遣って「馬場が最強ですよね!」と調子を合わせたら、めちゃくちゃ怒られたんですよ。

「ダメだよ、兄ちゃん。嘘でも自分の時代のプロレスラーが最強だって言わないと」って。
「その世代の凄さはあなたたちが一番詳しいんだからさ、武藤と三沢の方が強い!って言ってくれないとつまんないじゃん」って言われて、ハッとしました。

燃え殻 そっか、やっぱり次世代が来たときに、ボクらの世代の凄さというのをガッチリ伝えないといけないわけだ。

これだーと、思いました。

全体で読んでもらわないと、誤解を持つ方もいるかもしれないけれど、決して自分たちが永遠に最高に正解だ、それ以外はだめだというわけではない、でも、逆に新しいもの、現在がすべてで、過去のものは何も価値がなくなる訳じゃない。

色んな価値があっていいのだから、私は、私が更新できずにいる感覚や価値観を大事にしていい。
それをガッチリ伝えたいと思った。
そのうえで、それを更新していくだろう新しい価値観にも、新しい目で教えてもらいたいと思う。

それが、私の役割かもしれないなぁ、と思う、今日です。







by otomeya | 2018-12-19 12:45 | お人形考


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