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追憶の人形店

今から・・・約10年前。
初めて パリで行ったお人形屋さんは、サンジェルマンにあった。

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「人形となら、うまく やれるかもしれない。」


と寺山修二がつぶやいたのも、サンジェルマン。


同じお店かどうか知らないけれど、
私の「お人形」も、パリのサンジェルマンのガラス越しに、いた。

「フランスは、英語を話せないと、意地悪される」

という先入観を持っていたのだけれど、

「意地悪されようと、なんであろうと、フランスに来たからにはお人形をみたい」

の気持ちのほうが強くて、ガッツでいったのでした。

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あいにく、最初、店内はしまっていて、
ガラス越しに、お人形と、お人形の道具が、
少し散らかった店内に、
毛の長い猫が寝ていた。

ええ~~??しまってる~(号泣)


と思いつつ、でも、ここは、思い描いていたとおりの、以上の、「パリの人形屋」で、あった。

仕方なしに・・・・でも、記念に、と、ウインドーのお人形を写真に収める。
どうせ、買えることはなかったのだから・・・・。
と、自分を慰めながら、帰ろうとしたとき、
運よく、お店の息子さんに出会い、連絡をとってもらって、
本当に、奇跡的な偶然で、マダムを呼んでいただけて、お店を見せていただいたのでした。

追憶の人形店_e0037611_134049.jpg「意地悪」なはずの、フランス人は、
買いもしない片言の英語のJAPな私に
わざわざ他店から出向いて、快く、お店を空けてくれ、
いろんなお人形を触らせてくれて、見せてくれて、
写真まで撮らせてくれた。

お菓子をすすめてくれて、
日本人のアンティークの買い付け人の話なんかも、
わかるように、いろいろ工夫して、話してくれた。

修理中のお人形や、マダムの私物のお人形、珍しいお人形、
お人形の小道具なんかが、ゆるい感じで置いてあって、
そのゆるさと空気が、「私の理想のお人形屋」として、刷り込まれた。

まさに・・・・理想の人形屋だった。

その後、フランス、イギリスで、お人形屋をいくつも見たけれど、
いちばん理想のお人形屋はここにしかなかった。
数年前、久しぶりに行ったときには、すっかりきれいになって、
高級な雰囲気の人形屋になってしまっていた。

マダムの人柄はかわらなかったけれど、
あのころの、古き、よき、美しい・・・・を、形を整えなくて、
ゆるいままで、自然に体現したスタイルは、なくなっていた。

前のお店から感じたものは、
「フランスにとって、一部のすばらしいものを除いて、
アンティークドールという存在は高級なものではなく、
生活の中に溶け込んだ、ひとつの文化である」
というものが、感じとられる「ゆるさ」の感じられる風情だった。

それが、すっかり、「高級品、芸術品として、アンティークドールを扱う」風情になったように感じた。

でも、それは、ここだけに感じられたことではなく、パリの街中、全体がそんな感じだった。
普段の、生活の中にとけこんだ「古いフランスらしい、風情」ではなく、
「新しいものの中に、古いフランスが息づく」
というように、変わったような気がした。
以前、それもほんの3年ほどの歳月が、パリの根底の部分を変えてしまったように思えた。
見た目には、ロンドンほど、激しく変わっていなかったけれど・・・・。

こんなことを、書くから、「アナログ主義」と、とか、「懐古主義」と、思われるのでしょう。
自分としては、古いものにこだわっているつもりはないのだけれど、
私にとって一番、変わってほしくないところが、いつも、最初に、変わってしまうような気がする。
ほかの人には、大事じゃないってことなのかな。


追憶の人形店_e0037611_139481.jpgなんでもいいけど、私の理想の人形屋は、
いつまでも、あの、
サンジェルマンのガラスのウインドーの向こうにある。

それは、きっと、いつまでも、変わらないと思う。


ちなみに、2年前行ったときには、蚤の市でも「写真お断り」が、基本。
旅の際には、お気をつけくださいね。
by otomeya | 2006-03-22 13:09 | お人形考


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